タネの未来

タネは誰のものかって? 私の命よ。人間さん、かってにいじらないで!

そもそも「種苗」とは、植物のタネと苗のこと。種苗法は、種苗の育成者の権利を守る法ですが、“種は人類の遺産” という考え方に基いて農家のタネ取りの権利とのバランスをとっていました。そのバランスが今回の改正で育成者の権利を守る方に大きく舵をきる方向に動いています。この動きは国民の食と農の根幹に関わるものであり、今後のわが国の農業に大きなマイナスの影響を及ぼすものです。

そこで、この改定案をすみやかに廃案にすることを求めるとともに、日本の農業を真に守るための改革を求める要望書を提出しました(2020年5月)。

さらに、「農家の権利だった自家採種、自家増殖を、なぜ今制限するの?種苗法改正は、日本の食と農の未来に必要?」というテーマで種苗の「知的財産権」強化、農家の「自家増殖の権利」制限についてわかりやすくまとめたリーフレットを発行しました。


しかし2020年12月2日に改定案が国会で可決され、「種は誰のものなのか?」という本質論議が深まらないまま、農業者がこれまでもっていた「種の権利」に規制がかかってしまいました。

種苗法改定で、今後どんな問題がでてくるのだろう?気になるところですが、農林水産省も情報をだしていないので、農業現場も先が見えない状況です。このページでは、その影響について、分かり次第情報を届けていきます。


それで結局、種苗法改定の何が問題なんですか?

この資料にまとめられていますよ!

改正種苗法の問題点(資料提供:印鑰智哉氏)

さらに他にもいろいろあって、まずは・・・。


①熊本県で生産の多いサツマイモの登録品種の割合は50%、イチゴは78%、い草に至っては100%!農林水産省は印鑰さんが書かれているような影響を過小に見積もっているどころか、その影響が計算されたものを示してもいないんです。育成者権の許諾の手続きもいまだにはっきりとしていません。

それじゃあ農家にどれだけ影響があるか予想もつかないですね・・・。

そうなんです。それに有機農業だとまた別の問題もあるんです。

②有機JASの基準では有機栽培の種苗を使うことが原則となっていますが、現状ではほとんど販売されていません。ということは原則通りの有機栽培を行うには、有機農家が自家採種する必要があります。それなのに種苗法の規制で、有機農家は自分で有機栽培したものを自家採種できなくなってしまいます

じゃあ有機の種苗は毎年とぎれてしまうことになりますね。

さらに有機JASではゲノム編集技術を認めないという方針が決まっていますが、ゲノム編集種子には表示義務がありません。

表示がないならどうやって見分けるんですか?

それがわからないのです。どうやって有機の基準を満たせばいいのか、道筋は何も見えていません。

ちなみにゲノム編集については、こちらの資料がわかりやすいですよ。

<参考資料>ゲノム編集技術とは、<参考資料>有機JASにおける取り扱い
(日本農林規格の見直しについて(2020年1月31日 農林水産省 食料産業局)より)

ゲノム編集にも種類があるんですね!3種類あるけど、それぞれ結構違うみたいですね。

そして他にも問題点はあります。

③種苗法改定案が国会で可決されたときの附帯決議(法的拘束力はないけれど、可決までに出された意見などを反映したもの)では、

「三 各都道府県が、稲、麦類及び大豆の種子の原種ほ及び原原種ほの設置等を通じて種子の増殖に必要な栽培技術等の種子の生産に係る知見を維持し、これを民間事業者に提供するという役割も担いつつ、

「八 公的試験研究機関が民間事業者に種苗の生産に関する知見を提供する場合においては、我が国の貴重な知的財産である技術や品種の海外や外国企業への流出を防止するため、適切な契約を締結する等十分留意するよう指導すること。 」

とあります。

これまで税金で開発されてきた種苗の知見を民間事業者に提供することが前提だ、と何度も書かれているのです。

種苗法の一部を改正する法律案に対する附帯決議

民間に知見が渡されたら、一体どんなことが起こるんでしょう・・・?

民間に知見が渡された場合の農業現場への影響についても、何の想定も示されていないので、どうなるかは誰にもわかりません。

やっぱりですか・・・。

最後にもう一つ。

「ゲノム編集」種子は、「遺伝子組み換えではなく自然交配と同じもの」というのが国の見解。だから、法律で規制されることもないし、タネへの表示義務もありません

種苗法の視点でいえば、単に品種改良されたの登録品種として扱われます。

農林水産研究イノベーション戦略2020に「ゲノム編集は、タネの選抜を1年間に短縮し、品種登録数を10倍に向上する」と書かれているように、今の主流のF1のタネより簡単に作られ、それが世の中に出るときには、登録品種としてでてくることは間違いないでしょう。

農水省:農林水産研究イノベーション戦略2020

F1はタネの袋に明記されていますが、「ゲノム編集」種子は・・・。

ゲノム編集種子は、表示義務がありません。そんな中で、タネの袋に記載されるのでしょうか?消費者も農業者も、ゲノム編集種子でないものを選ぶことができないかもしれないのです。

日本企業による「ゲノム編集」トマト、「ゲノム編集」後代交配種(資料提供:印鑰智哉氏)

2018 年4月1日をもって廃止されてしまった種子法。この法律は“二度と国民を飢えさせない” という誓いのもと、基幹農作物であるコメ、麦、大豆の種子の生産管理を「国の役割」と定めた、食の安全保障のための法律でした。しかし種子法の廃止により、役割を義務づけられなくなった都道府県はやがては予算措置ができず、基幹農作物である優良品種 の生産管理が、全国的に断念せざるをえなくなることが懸念されています。

この状況の中で、全国各地で都道府県単位での独自の条例を制定する動きが起こり、熊本県でも条例化を進めるよう、くまもとのタネと食を守る会より請願書を提出しました。その後、2019年12月に熊本県でも「県主要農作物種子の生産及び供給に関する条例」の施行に至りました。